株式会社アトラス代表の甲斐田です。
券売機と中古両替機の販売、買取、レンタルを手がけており、年間1000件以上の取引実績があります。
20年以上この業界に携わり、修理も含めて数多くの案件を手がけてきた経験から断言できるのは、中古両替機は外見だけでは判断できない隠れた欠陥が非常に多いということです。
内部消耗部品の摩耗、センサーの劣化、制御基板の不具合など、目に見えない部分でのトラブルが大半を占めます。
「格安で購入したものの、結局修理費が新品価格を上回ってしまった」という相談を数え切れないほど受けてきました。
両替機は売上を作る機械ではなく、日常業務を効率化するための設備です。
飲食店のオーナー様や温泉施設など、できるだけコストを抑えたいというお気持ちは十分理解できます。
しかし、正しい知識なしに中古品を購入すると、かえって大きな損失を招くリスクがあります。
今回は、私の実体験をもとに、中古両替機の正しい選び方と絶対に見落としてはいけない注意点について詳しく解説いたします。
両替機メーカーの現状と価格帯

主要メーカーについて
現在、両替機を製造しているメーカー主要なメーカーは以下の通りです。
グローリー:業界大手で高品質だが高額(1台150万円~200万円)
ボステック社:比較的手頃な価格帯(1台100万円前後)
KYONAN:小型の両替機K631シリーズを販売5種類のバリエーションあり
マリンゲーム:両替機専門のメーカー高額紙幣・低額紙幣の両替機の種類が一番豊富
【重要】メーカー選択における現実的な問題

現在、両替機を販売している主要メーカーは上記に挙げたメーカーが一般的です。
それ以外のメーカーの多くは既に倒産や業務移行をしているため、部品調達やメンテナンス対応ができない機種が数多く存在します。
私が20年以上この業界にいる中で、特に2000年代に活動していた中小メーカーの機械は、現在ほぼ完全にサポートが終了している状況です。
さらに問題として、中古品に関しては残念ながら部品交換に応じてくれるメーカーはほぼありません。
これは新品購入時の保証やサポート契約とは全く別の話で、中古で購入した機械の部品供給を受けることは極めて困難です。
つまり、中古両替機を購入する際は「壊れたら修理不可能」という前提で選ぶ必要があるということです。
この現実を踏まえると、機械選びは非常にシビアな判断が求められます。
中古両替機の選び方完全ガイド ~プロが教える失敗しない購入のコツ~
中古両替機を選ぶ理由は、正直に申し上げて「コスト面」の一択です。

新品の両替機は非常に高額で、業界大手のグローリー社製品は1台あたり150万円前後、他メーカーでも80万~100万円前後が相場となっています。
これに設置工事費、初期設定費用などを含めると、1台導入するだけで200万円近くになることも珍しくありません。
一方、中古品であれば新品の5分の1程度、つまり20万円~40万円程度のコストで導入が可能です。
この価格差は、特に個人経営の飲食店や小規模事業者にとって決定的な要因となります。
なぜコスト面以外に理由がないのか

私が1000件以上の取引を経験してきた中で、中古両替機には以下のような現実があります:
- 性能面では新品に劣る:どんなに整備されていても経年劣化は避けられない
- 保証期間が極めて短い:多くの場合一週間程度の動作保証のみ
- メンテナンス費用が読めない:突然の故障リスクが常につきまとう
それでも中古を選ぶのは、初期投資を抑えたいという経営判断以外にありません。
ただし、現行(現在も製造・販売されている)製品・修理対応が可能な両替機を選ぶことは絶対条件です。
製造終了品では部品調達が困難になり、修理すらできない状況に陥るリスクが高まります。
つまり、「コストは抑えたいが、最低限のリスク管理は行いたい」という現実的な選択として中古品があるということです。
外観チェックポイント ~購入前に必ず確認すべき項目~

製造番号がはっきりと確認できない両替機は避けてください
製造番号による中古品の見分け方
ERD-20Qシリーズの見分け方
青いデザインのERD-20Qは、販売から20年以上経過しているものの、日本で最も多く見かける両替機です。
この機種を購入検討される方は、必ず製造番号をチェックしてください。
なぜ、製造番号の確認が必要なのか?
次の章で解説します。
注意が必要な旧型のERD-20Q
9000番台まで:旧型(絶対に避けるべき)オーバーホールが絶対に必要
電源部が弱く、特定の基板が未搭載
購入から1年程度で電源が入らなくなるトラブルが多発
こちらを購入した方がリスク回避できる
10000番台以降:後期型(推奨)
50000番台、52000番台などが一般的
制御基板が搭載されており安定性が向上
⚠️注意:製造番号を隠している・はっきり写ってない・印字がカスレている両替機を出品者もいるため、必ず確認を求めましょう。
サビの状態確認

サビの有無は保管状況を判断する重要な指標です
サビが多い場合:パチンコ店の倉庫で長期間放置されていた可能性が高い
ドア内部の確認:外観だけでなく、ドアを開けて内部のサビ状況もチェック
悪質業者の存在:倉庫から引き取ってそのままオークションに出品する業者もあるため注意
筐体の損傷チェック

ドア周辺の確認ポイント
ドア取り付け部の隙間について:均一でない場合は落下や衝突の可能性
ドアの開閉について:スムーズに開かない場合は調整が必要になる
全体的な歪み:修理後も完全には元に戻らないことが多い


ERD-20Qシリーズは他の両替機と比べてドア部分が特に弱く、力任せに開閉すると破損しやすい構造になっています。
現在の両替機には途中でストップがかかる機能がありますが、この機種にはありません。
電源コードの状態

電源コードの状態は、その両替機がどのような環境で使用されてきたかを判断する重要な指標です。
なぜ電源コードから内部状態が分かるのか?
コードに油や粉塵がたくさんこびり付いている状態は、両替機の内部も同様に油や埃が付着している場合が多いからです。
これは物理的に考えれば当然のことで、空気中に油が舞っているような環境(厨房近くなど)では、外部の電源コードだけでなく、両替機の内部、特にセンサー部分やベルト部分にも油がべっとりと付着している可能性が極めて高いのです。
具体的なチェックポイント
油汚れの付着パターン
- 飲食店での使用歴:厨房の油煙が原因
- 内部への影響:センサーの感度低下、ベルトの劣化促進
- 故障リスク:紙幣識別不良、搬送トラブルの頻発
埃の蓄積状況
- 長期間清掃されていない証拠
- 内部機構への影響:センサー部分の汚れ、可動部分の動作不良
逆に信頼できる販売店の見分け方
逆に言えば、電源コードまで目が行き届いて清拭されているリサイクルショップは、よほど念入りに清掃・整備を行っている証拠と考えられます。
私の経験上、電源コードのような「見落としがちな部分」まできれいにしている販売店は、内部清掃や動作確認も丁寧に行っている可能性が高く、信頼度の一つの指標として活用できます。
なぜこれが致命的なのか
私の経験上、油汚れが付着した両替機の内部清掃は非常に困難で、分解清掃が必要になるケースがほとんどです。
しかし、中古品では分解清掃を行ってくれる業者を見つけることも困難で、仮に見つかったとしても清掃費用が機械の購入価格を上回ることも珍しくありません。
内部チェックポイント ~実機確認時の重要項目~

ゴムベルトの劣化状況
両替機は機種を問わず、紙幣や硬貨の搬送に必ずゴム製品(搬送ベルト)を使用しています。
これは両替機の重要な部品で、ERD-20Qに限らず、どのメーカーのどのタイプでも例外はありません。
私が1000件以上の取引で一番多い相談が搬送のベルト劣化に関する相談です。
このゴムベルトの劣化が中古両替機の最大の落とし穴となっています。
主要機種別チェックポイント

BOSTEC社 NB-4W2(旧PD17シリーズ)の確認方法
- 払い出しベルトの確認:指で軽く引っ張ってみて、伸びた感じがする場合は交換が必要
- 刻印の確認:ベルトには製造時の刻印があり、摩擦で薄くなっている場合は劣化が進行
- 識別機のベルト:紙幣識別部のベルトも同様にチェックが必要
自販機用縦型ビルバリ NBXシリーズ
- 1000円札を払い出す払い出し機構
- 10000円札を収納するビルバリ機構
- どちらか一方、または両方に必ずゴムベルトが使用されている
どの製品も、お金を払い出す部分やお金を投入するユニットで搬送ベルトを使ってるのでチェックしてください。
ERD-20Qも一緒です。
なぜゴムベルト劣化が致命的なのか

ゴムベルトは下着のゴムと同様で一番劣化しやすい部品の一つです。
実をいうと、ベルト以外の部品は意外と10年以上経っても全然問題ない場合が多いものです。
5~10年で確実に劣化します。
劣化したベルトを使い続けると・・・
- 紙幣の搬送不良が頻発
- 紙詰まりの原因となる
- 最悪の場合、機械全体が停止
さらに深刻なのは、中古品では部品交換に応じてくれるメーカーがほぼないということです。
つまり、ゴムベルトが劣化していた場合、その機械は「修理不可能な不良品」を購入することになります。
実機確認時は、必ずゴムベルトの状態を入念にチェックし、少しでも劣化の兆候があれば購入を見送ることを強く推奨します。
センサー部分の確認
センサーとゴムベルト・電源部のコンデンサーが正常であれば、両替機は比較的長期間使用できます。
お金を扱う製品として一流メーカーの製品は頑丈に作られていますが、これらの消耗品の状態が使用可能期間を左右します。
購入時の注意点とリスク回避
オークション購入時の注意
表記の不正確さ:出品者の知識不足により、誤った情報が記載されている場合がある
対応の悪さ:トラブル時に出品者が対応してくれないケースが多い(ノークレーム・ノーリターン)
現物確認の重要性:写真だけでは判断できない部分が多数存在
特に注意すべき機種
ER-500シリーズについて
ERD500V、ERD500Mなど複数のバリエーションあり
中には紙幣のみ対応で硬貨に対応していないものも存在
10,000円札が両替できない機種もあるため、仕様の確認が必須
プロによるオーバーホールの重要性
対応可能な修理内容
当社のようなプロの業者であれば、以下の対応が可能です
ベルト交換:最も重要な消耗品の交換
センサー調整:精密な調整が必要
全体的なオーバーホール:5~10年の長期使用を可能にする整備
コストパフォーマンス
新品との比較:中古品は新品の約5分の1のコスト
長期使用実績:適切な整備により5~10年の使用が可能
トラブル対応:ボステックやグローリー製品の修理にも対応
まとめ ~失敗しない中古両替機選びのために
中古両替機を購入する際は、以下のポイントを必ず確認してください:
1:製造番号の確認**(特にERD-20Qの9999以下の番台は避ける)
2 :サビの状態チェック
3:筐体の損傷確認
4:電源コードの状態
5:内部のゴムベルト劣化状況
これらのチェックポイントを押さえることで、「変なものを掴まされた」というリスクを大幅に減らすことができます。
当社では、ERD-20Q、ERD500V、ERD500M、ボステックEX108などの中古両替機を適正価格で販売しており、購入後のアフターサポートも充実しています。
中古両替機の導入をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。